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移行地の不動産鑑定評価で、商業系用途への移行の程度が高いが、全て住宅地の事例で比準しているとの指摘です。新要説不動産鑑定評価基準によれば、「移行地は、工業地域等から住宅地域へ移行しつつある住宅移行地、住宅地域等から商業地域へ移行しつつある地域に存する土地である商業移行地等に分けられる。」と解説されております。対象不動産はおそらく後者に該当するかと思われますが、審査委員の先生は、商業地で比準したうえで、商業地移行が不完全な状態であることによる減価をしろとの指示なのかも知れません。移行地の不動産鑑定評価自体が少ないため、私も悩みますが、仮に本指摘による住宅地の事例で比準するなら、商業地移行への増価を考慮すれば、減点は少なくなるかも知れません。ただ、商業移行地は都心もしくは鉄道新駅開設等特殊要因がないと出現しない土地の種別のように思います。
大規模画地の不動産鑑定評価で、基準容積率が標準画地よりも大きいことが個別格差に反映されていないとの指摘です。標準画地を道路幅員が狭い地点で設定されているのかも知れませんが、その場合は取引事例、対象地共に個別格差で修正する必要があります。私もうっかりすることがありますが、個別性の強い対象不動産の場合、対象地と異なる方位、道路に標準画地を設定すると、標準画地と対象地との間でも個別格差が生じてしまいますので、修正が必要となります。しかしながら、普段は対象地と同一の方位、道路に標準画地を設定しているため、ついうっかりしてミスしてしまうという構図です。やはり、繰り返しの見直しが唯一の防止策ですね。
借地権の不動産鑑定評価で、昭和28年築で建付減価無しとしているが、その状況について判断根拠が記載されていないとの指摘です。借地権の不動産鑑定評価の場合は、取引事例比較法、収益還元法(借地権残余法)、賃料差額還元法、借地権割合法の4手法を利用して、鑑定評価額を求めることとなりますが、建付減価が問題となるのは借地権の取引慣行の成熟の程度が高い地域の場合は取引事例比較法、低い地域の場合は底地価格控除法かと思います。まず、取引事例比較法の場合ですが、基準地借地権をまず求める際、建物の残存耐用年数が価格形成要因となりますので、仮に基準地借地権上の建物が平成2年築で取引事例が昭和38年築であるなら、建て替えが必要となるか否かで格差修正し、その後の対象地借地権の格差修正で、平成2年築と昭和28年築を比較し、格差修正するという流れになるかと思います。純粋な建付減価と言うよりは、増改築承諾料等の要否判定が基準ということとなります。底地価格控除法では、底地価格を控除する前提の土地価格は、借地権の態様に応じ、対象不動産が最有効使用の状態にあるか否かによって、更地価格もしくは建付地としての価格を選択しなければならないことに留意する必要があることになっておりますので、本指摘のあった昭和28年築の場合は、最有効使用でないことによる建付地価格を選択する必要があり、その価格に建付減価を反映させる必要があるということとなります。
借地権の不動産鑑定評価について、減価要因として、対象地の容積率が標準画地に比べて低いとしているが、その原因について説明がないとの指摘です。標準画地は近隣地域内に取りますので、通常は用途地域、容積率等は同様の数値となります。但し、基準容積率に関しては、前面道路幅員により変わりますので、対象地は標準画地よりも狭い道路幅員だったのかも知れません。いずれにしても、不動産鑑定評価書の中には根拠を示す必要があると思います。
借地権の不動産鑑定評価で、「借地権取引の成熟度の低さ」として、土地の個別的要因で考慮している(借地権価格形成要因である)との指摘です。借地権の取引事例は極めて少なく、表に出てこないこともあることから、借地権の取引事例比較法を適用出来るケースは極めて稀かと思います。とはいえ、借地権の事例が収集出来れば適用可能となりますので、その場合は、近隣地域内の基準地借地権、即ち標準借地権の更地価格形成要因(地域要因及び個別的要因)と事例借地権の更地価格形成要因(地域要因及び個別的要因)並びに標準借地権と事例借地権の借地権価格形成要因(地域要因及び個別的要因)とを比較して、標準借地権価格を求め、これに対象借地権の更地価格形成要因(地域要因及び個別的要因)の格差率を乗じ、その後に対象借地権の価格形成要因の格差率を乗じることとなります。指摘の「借地権取引の成熟度の低さ」は借地権価格形成要因の中の地域要因とされておりますので、土地即ち更地の個別的要因で考慮するのは間違いと言うこととなります。但し、借地権取引の成熟度が低い地域で借地権の取引事例を収集出来るのかと言う問題があります。
低層住宅の不動産鑑定評価で、建付減価の内容が不明との指摘です。建付減価とは、まさに建物が付いていることにより、土地の価値が減少している状態であり、収益性の側面から見ると分かりやすいかと思います。不動産鑑定評価で問題となるのは、例えば容積率の未消化部分が大きい場合で、7階までの建築物が建築可能な土地であるにもかかわらず、3階建が存立している場合などです。この場合、4階〜7階部分の床面積を利用することによる効用(自用もしくは賃貸)を放棄している状態であり、賃貸に供すれば賃料収入を得られる利益を放棄していることとなります。当然、土地の収益率が落ちますので、土地の価値が減少している状態となります。すなわち建付減価が発生している状態です。なお、本指摘は低層住宅の不動産鑑定評価ですので、収益性よりは快適性が阻害されている可能性が高いものと思われます。例えば、築40年の木造低層戸建が存立している土地だとすると、新築物件なら得られる快適性が建物存立により阻害されている状況ですので、建付減価が発生していると言えます。指摘の通り、不動産鑑定評価書には、建付減価の内容を記載する必要があります。
低層住宅の不動産鑑定評価で、耐震性・遵法性の判断根拠が目視のみで判断されているが、説明が見当違いとの指摘です。外観目視の他、建築年、建築確認取得履歴(旧耐震か新耐震か、確認済証までか、それとも検査済証まで取得しているか)など、建築確認通知書もしくは概要書も判断材料となります。この他平面図等の図面や住宅性能評価書等もあれば判断材料として有益です。
店舗の不動産鑑定評価で、特定道路の緩和は幅員6m以上でなくては受けられないため、基準容積率は240%であり342%は誤り。この結果、取引事例比較法における容積格差+10%も誤りとなり、当該事例からの試算は誤りとなるとの指摘です。建築物の敷地が、当該敷地の前面道路幅員が6m以上12m未満で、当該前面道路が延長70m以内で幅員15m以上の道路(この項で特定道路という)に接続している場合、実際の前面道路幅員に政令で定める(特定道路から前面道路までの延長距離に応じた)数値を加えたものが前面道路幅員となります(建基法第52条第8項)。本指摘からは6m未満の道路を対象に特定道路による容積率緩和適用は誤りであることが分かります。
業務用ビルの不動産鑑定評価で、昭和50年築の鉄骨造であればアスベストの可能性が通常は高いが、独自調査によってないと断定した根拠が不明との指摘です。アスベストが含有している吹付け材の使用は昭和30年頃からであり、昭和50年10月1日に含有率5%以下の吹付け材の使用が原則禁止となりましたが、含有率1%以下の吹付け材の使用は平成7年3月31日まで原則禁止とされておりませんでした。対象不動産は昭和50年築のようですので、指摘の通りアスベスト使用の可能性が通常は高いものと思われます。独自調査と言いましても、専門機関にサンプルを持ち込んで、分析までしないとないとは断言出来ませんので、やはりこの場合は使用可能性があるとして、逃げる方が実務としては正解だと思います。
高度利用賃貸の不動産鑑定評価で、改修履歴が価格形成要因に反映されていないとの指摘です。 ここで改修とは、デジタル大辞泉によれば道路・建物などの悪い部分を直すこと。「橋を―する」「―工事」とされております。例えば、いわゆる耐震改修で旧耐震建物(昭和56年5月31日以前に着工された建物)を新耐震基準に適合するよう改修した場合、価格形成要因として判断する必要があるように思います。対象不動産の改修履歴が具体的に分かりませんが、審査委員の指摘からは、大規模な改修が行われた履歴があるように感じます。
住宅地の不動産鑑定評価で、規模・立地から見て開発法の検討が必要と判断されるが適用がなかったとの指摘です。開発法適用の具体的面積基準が不動産鑑定評価基準に明記されている訳ではありませんので、あくまで「検討」が必要との指摘ですが、いわゆる開発素地である場合は、開発法適用が必要となります。当方が目安にしているのは、対象地における開発許可必要面積基準です。なお、開発指導要綱は行政ごとに異なっており、面積基準のみで判断するのは危険です。一例を挙げれば、敷地内の開発道路幅員だけでなく、接続道路幅員の拡幅まで求められる行政もあり、この場合、そもそも開発許可自体が下りない可能性のある土地であることもあります。そのような土地に開発法を適用してしまいますと、開発出来ない土地に開発法を適用することで矛盾が生じ、問題になることがあります。
移行地の不動産鑑定評価で、「宅地見込地の鑑定評価手法を参考に」は不適切との指摘です。不動産鑑定評価基準における移行地の定義は「移行地とは、宅地地域、農地地域等のうちにあって、細分されたある種別の地域から他の種別の地域へと移行しつつある地域のうちにある土地をいう。」とされております。宅地地域の細分化された地域は住宅地域、商業地域、工業地域等です。また、農地地域の細分化された地域は田地地域、畑地地域等となります。見込地の定義と異なる点は、「うちにあって」と言う点であり、見込地が宅地地域、農地地域、林地地域等の「相互間」で「転換」とされている点よりは明らかに変化の度合いは低いものと考えられます。従って、変化の度合いが弱い移行地の不動産鑑定評価に関し、変化の度合いの強い宅地見込地の鑑定評価手法を参考とするのは、不適切と言うこととなります。
あらゆる不動産鑑定評価で、評価方針と適用手法の不一致との指摘です。例えば、戸建住宅の不動産鑑定評価で、評価方針としては、積算価格と収益価格を算出するとしながら、実際の適用は積算価格(正確に言えば、土地は取引事例比較法、建物は原価法により算出した価格のそれぞれを積算した価格)算出のみで、収益価格は戸建賃貸市場が未成熟のため適用しなかったなどと言う場合です。鑑定評価書のゲラを作成している時は、体調などで注意力散漫な場合もあり、頭の中で考えていることと、ゲラの内容が一致しないこともあります。見直しの回数を出来る限り増やすのが現実的な対処法だと思います。偉そうなことは言えませんが。。。
移行地の不動産鑑定評価で、戸建分譲適地と考えられるが、開発法の適用がないとの指摘です。本指摘から推察するに、対象不動産は工業地域等から住宅地域へ移行しつつある地域に存する土地である住宅移行地だと思われます。開発法適用の具体的数値基準は不動産鑑定評価基準には明記されておりませんが、当方では対象不動産の存する地域の開発許可最低必要面積以上を目安にしております。例えば、横浜市の場合は500㎡以上が開発許可必要面積となりますので、対象地が600㎡だとした場合は、当然開発法の適用可否を判定致します。しかしながら、その600㎡が開発道路を新設する基準に該当しない土地である場合等もあり、その場合に開発法を適用してしまうと、開発許可が下りない土地に開発想定をすることとなりますので、その場合は開発法を適用せず、地積過大等で個別格差を考慮するという評価内容となります。勿論、その600㎡はどう考えても開発許可が必要かつ取得可能と言うことでしたら、開発法を適用しないのは、やはりまずいということになります。
借地権の不動産鑑定評価で、借地権の取引慣行が成熟していると分析しているのに、取引事例比較法を適用しないことについての説明が不十分との指摘です。これは実務に携わっている方ならすぐに分かる、頭の痛い問題です。借地権の不動産鑑定評価は、取引事例比較法、収益還元法(借地権残余法)、賃料差額還元法、借地権割合法の4手法を適用して鑑定評価額を決定致しますが、その中の取引事例比較法を適用する際の取引事例が極めて少数で、比準すらままならない場合が殆どという状況です。取引総数自体が極めて少ないということもありますが、借地権者、設定者の当事者間売買により、取引が表に出ない状況もあるからです。従って、借地権の取引慣行の成熟の程度は慎重に判断する必要があります。現実的な対応としては、「借地権の設定が多い地域で、借地権の取引慣行は成熟しているが、直近の取引事例が極めて少なく、取引事例比較法の適用は断念した。」等の記述となるかと思います。
不動産鑑定評価書記載の取引事例、公示価格の時点が古いとの指摘です。実務的には取引事例収集の難易度が存在します。商業地や大規模画地、市街化調整区域、借地権、底地等の取引事例は収集が難しいものです。従って、ある程度古いものも利用せざるを得ない場合があります。但し、公示価格の時点が古いという指摘は、よく分かりません。地価公示は毎年1月1日現在の価格、地価調査は毎年7月1日現在の価格となりますので、現在時点の鑑定評価であれば、その時点に最も近い公示もしくは基準地価格を利用出来るかと思います。
不動産鑑定評価で、明らかに、標準価格が比準価格の幅に入っていないと認められるとの指摘です。通常、取引事例比較法においては規準価格で検証した比準価格をそのまま標準価格としますので、比準価格の枠の中に入ってこないということはありません。計算ミスもしくは標準価格ありきで比準価格を算出している可能性があります。本指摘はそれらを咎めたものと思われます。
いずれの不動産鑑定評価において、土地価格の比準の幅が大きいにもかかわらず、安易に中庸値を採用しており、もう少し説明が欲しいとの指摘です。実務をされている方なら、耳が痛い指摘だと思います。取引事例比較法は取引事例があれば、いずれの不動産鑑定評価でも適用する手法ですが、頻繁に土地取引があり、いわゆる相場が形成されている地域と、取引自体が少なく、あっても当事者の言い値で成立している事例が多い地域とがあり、後者の場合の比準価格算出に苦労します。つまり、不動産鑑定評価基準でいうところの限定価格に類似した取引とも言えるかと思います。確かに不動産鑑定評価基準は理論的ではありますが、現実は必ずしも理論通りに市場が成立している訳ではありませんので、価格幅が大きくなるのはある意味正常とも言えるかと思います。むしろ、環境条件で何でも調整するという傾向の方が、個人的には問題があるようにも思えます。
指定類型の不動産鑑定評価で、土地価格の比準において容積率格差が考慮されていないとの指摘です。容積率の格差が問題となるのは、主に収益物件です。容積率により建築可能な延床面積が決まりますので、延床面積が大きければ大きい程、例えば事務所や店舗として賃貸出来ますので、賃料収入にダイレクトに跳ね返ります。従って、商業的特性の強い取引事例の比準は容積率の格差を見ないとおかしなことになってしまいます。一方で、住宅地の取引事例の比準を考えると、例えば容積率80%の、建築協定のある大手不動産会社の分譲地と容積率200%の、準工業地域にある3階建戸建の敷地を比較した場合、容積率格差を見る必要があるのか。私個人の見解では不要だと思います。勿論、取引事例は対象不動産と類似した取引事例で比準するのが原則ですので、80%の分譲地なら、同様の容積率の分譲地で比準するのが原則ですが、取引事例自体の総数の問題もあり、事例が少ない場合は利用せざるを得ない場合もあります。その場合の容積率格差補正は原則不要かと思います。なお、マンションも確かに容積率により建築規模が左右されますが、マンションの鑑定評価の場合は、通常一室の鑑定評価になりますので、ほぼ問題とはなりません。ここでいうマンションとは、居住用のことで、商業施設などの区分所有は除きます。
指定類型の不動産鑑定評価で、別表記載の事例と事例カードが符号していないとの指摘です。これは、事務処理のミスだと思われます。取引事例を確定させてから、別表を作成すれば問題はないかと思いますが、類似した取引事例が多い場合などは、取捨選択に迷い、頭の中で考えていることと、やっていることの齟齬が生じる場合があります。結局のところ、複数回の見直し以外に対応策はないように思います。私も肝に銘じる必要があります。
移行地の不動産鑑定評価で、移行の程度についての説明無しとの指摘です。比準についてもどちらの地域の事例を採用したのか不明との指摘です。工業地域等から住宅地域へ移行しつつある地域に存する土地を住宅移行地、住宅地域等から商業地域へ移行しつつある地域に存する土地を商業移行地と要説では説明されておりますが、例えば横浜市内の土地で考えた場合は、価格水準がより高い方へ移行する状況となります。従って、不動産鑑定評価基準の上では移行地はこう評価しろと言う具体的な記載はありませんので、移行前の地域の事例と標準地で比準して、移行に伴う増価を見る方法と移行後の地域の事例と標準地で比準して、移行が不完全であることによる減価を見るか、いずれの方法になるかと思います。移行後の地域の事例と移行前の地域の事例を混ぜて比準するのは良くないと個人的には思います。なお、地域によっては価格水準が必ずしも高い水準の地域に移行する状況にない地域もあるかと思いますので、地域の状況に応じて評価する必要があると思います。
不動産鑑定評価の取引時点が古い事例が多く、最新の事例を入手していない又は先例の事例をそのまま活用した等の疑義を生じる可能性もあるため、古い事例を採用した場合には、最近の事例がないという説明が必要であるとの指摘です。これも頭の痛い指摘です。不動産鑑定士は取引事例収集にあたって、対象地がある都道府県の不動産鑑定協会に出向き、取引事例を閲覧するのですが、基本的にそれら取引事例はいわゆる新スキームにより作成された取引事例であり、国土交通省がアンケートを取引当事者に発送し、回答を得たもののみによるものです。従いまして、取引当事者の回答がない取引事例も存在するため、取引事例比較法適用の際の取引事例が、有り余って仕方がないというのはむしろ稀であり、大抵は取引事例が少なく、苦労することとなります。取引事例が古いという指摘は、探したがなかったという方が正しいかと思います。その辺の事情は審査委員の先生も理解しておりますので、探したがなかったと記載してくれれば、咎めないということでしょう。取引事例化されていない取引も多数あるため、不動産鑑定業者でもレインズの閲覧を可能にするとか、アンケートに答えていただいた方に粗品もしくは抽選で何かプレゼントするとかすれば、もう少し取引事例のストックも多くなるかと思います。